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院長ブログ

2021.07.18

抗菌薬(≒抗生物質)について

今回は抗菌薬について、お話ししたいと思います(一部難しい内容もあるかと思います…ゴメンナサイ)。


まずタイトルにもありますが、抗菌薬(=菌を殺す薬)と、抗生物質・抗生剤(=抗菌薬のうち細菌やカビなどの微生物から作られるもの。人工的に合成された抗菌薬は“合成抗菌薬”と呼ばれ、2つまとめて抗菌薬といいます)という言葉は少し違いがありますが、日常的にはほとんど同じ意味で使われます。


抗菌薬は文字通り菌(細菌)を殺す薬ですので、細菌が原因となる肺炎や中耳炎、副鼻腔炎/蓄膿症の治療にはとても有効なお薬です。一方、カゼはウイルスが原因となることがほとんどなので、細菌を殺す抗菌薬は効果がありません。

更にいうと、中耳炎や副鼻腔炎の初期/軽症例では、抗菌薬を飲まなくても治るケースが多いこともわかってきました(急性中耳炎/鼻副鼻腔炎ガイドラインも軽症例は抗菌薬非投与を推奨)。その理由は、中耳炎や副鼻腔炎の原因がウイルスである場合(かぜ症状の一つと考えます)や、細菌が原因であっても自身の免疫(抵抗力)で対処できる場合、だと考えます。

更につけ加えると、抗菌薬はかぜの症状を和らげたり、かぜの期間を短くする効果がないこと、かぜの重症化予防にほとんど役立たないことも、多くの研究でわかってきました。つまり、『かぜがひどくならないうちに…』、『念のために…』の理由で、抗菌薬を飲むメリット(利点)はほとんどない、ということになります。

それでは、かぜで抗菌薬を飲むデメリット(不利益)は何でしょうか。

乳幼児期の子どもたちに抗菌薬を出すと、お腹を下すことはよく知られています(予防として整腸剤を処方します)。下痢以外にも、吐き気や嘔吐をしたり、アレルギー反応で蕁麻疹や気分が悪くなることもあります。まれなケースですが、日常よく処方される抗菌薬(当院ではほとんど処方しません)で、お子さんの血糖値が下がり意識が低下する例も報告されていて(低カルニチン血症)、お薬の副作用を調査する専門機関からも注意喚起が出されています。(000143929.pdf (pmda.go.jp)
ただ、抗菌薬を飲んで目に見える不調がでないことも少なくありません。

 

不調が出なければ抗菌薬を頻回に飲んでも大丈夫でしょうか。 答えは“ノー”です。

実は、“不調の出ない”抗菌薬特有の副作用が、近年日本を含めて世界的な問題となっている、“薬剤耐性菌”というお話です。


人間の身体は約60兆個の細胞でできていますが、体内には常在菌と呼ばれる細菌が100兆個以上存在すると言われています。常在菌のほとんどが腸内にいるため、抗菌薬を飲むと常在菌の多くが死滅してしまいます。抗菌薬で死滅しない“耐性菌”が生き残るため、徐々に体内で耐性菌の割合が増え、抵抗力が下がった際に耐性菌による感染症(肺炎や中耳炎・副鼻腔炎など)を起こすと、抗菌薬が効きにくくなります。耐性菌に効く抗菌薬を飲むと、さらに効きにくい耐性菌が生き残り・・・という具合に、抗菌薬を飲む機会が多いほど耐性菌が増えるリスクが上昇します。耐性菌が増えても普段は症状がでないため、悪影響を自覚しにくいのです。


最近の研究では、腸内の常在菌叢(腸内フローラ)が様々な病気の発症や体の免疫(抵抗力)に関係することが解明されつつあり、その一つとして、2歳までに抗菌薬を使用すると、5歳の時点でアレルギー疾患(喘息・鼻炎・アトピー)を発症する割合が高いことが報告されています。(https://www.ncchd.go.jp/press/2018/antibiotic-use.html 国立成育医療研究センターHPより抜粋)
(※アレルギー疾患の発症には多くの要因が関連するため、抗菌薬内服だけが原因とするものではありません)。

 

『熱が高いから・・・』、『かぜの悪化予防で・・・』、『心配だから念のため・・・』という理由で、不必要な抗菌薬を(医師側が)処方する、または(患者側が)求める、機会を減らしていくことが、“不調の出ない”副作用を減らすことにつながります。


当院では、抗菌薬を処方“しない”のではなく、抗菌薬が“必要な病状”の際に飲んでいただけるよう、日々の診療で努めています。


とりわけカゼをひくことの多い乳幼児期は、ややもすれば抗菌薬を飲む機会が多くなりがちです。かかりつけクリニックでの抗菌薬処方回数が多くないか(明確な基準はありませんが、受診回数の半分以上で抗菌薬処方がある場合、個人的にはかなり多いと感じます。因みに、2020年7-12月の6か月間における当院の小児抗菌薬処方率は17.4%でした。)、今一度おくすり手帳を見直してみてはいかがでしょうか。


抗菌薬について、なにか疑問や不安な点がありましたら、診療の際にお気軽にご相談ください。

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